弘前発の新しい雇用創出の形
誰もが社会の中で活躍できる環境を目指す
高付加価値「貼り箱」オンライン受注事業

株式会社小林紙工

半世紀にわたり、手作業へのこだわりを貫いてきた株式会社小林紙工。ものづくりを通じて、家庭環境や病気の不安などで働きづらさを感じている方々が社会で活躍するための支援や、障害のある方々の「働きたいという思い」の実現、「社会の一線でも活躍できる」と思える環境づくりを目指しています。今回は、高付加価値な貼り箱を必要とする顧客に向けた販路拡大の取り組みについて、代表取締役社長の久保良太氏にお話を伺いました。

貼り箱:手作りにより作成した紙製の高付加価値な化粧箱で、酒造や菓子製造業などから発注のある特注品。

事業内容
貼箱の製造販売、包装資材の卸売、化粧箱・包装資材・厨房用品等の販売
協力企業
株式会社ストラテジーテック・コンサルティング

顧客開拓の頭打ち 特定業種への依存からの脱却

DXに挑戦に至った背景について教えてください。

弊社の創業は昭和48年、今年でちょうど創業50年になります。創業以来貼り箱などのものづくりの部門と、食品容器や包装袋などの包装資材の卸売りの2本柱で営業してきました。創業当時は地元のスーパーマーケットも多く、おかげさまで包装資材の卸売りで順調に業績を伸ばしていくことができました。

2010年を過ぎたころからでしょうか。地元から徐々にローカルスーパーがなくなってきて、青森県内にも大手スーパーさんが参入し始めてきました。そのころから包装資材の卸売りの売り上げが停滞し始め、弊社の業績にも少しずつ影響が出てきました。
貼り箱の需要に対しても同様で、特定業種への依存や青森県内顧客開拓の頭打ちといった課題も見え始め、自社の強みをもっと打ち出して行く必要があると考え始めました。

具体的にはどのようなことから始めましたか?

まずは自社の強みを社員全員でしっかり認識する必要がありました。
お客様が商品を購入するのには必ず理由があります。お客様は弊社の持つ強みにお金を支払ってくださっています。それは間違いありません。その理由こそが自社の強みになると思いました。

現在弊社をご利用いただくお客様は、主に日本酒などのお酒のパッケージやお菓子メーカーなど、こだわりの商品を製造している企業様からご依頼をいただいています。他社にない魅力的なオリジナル商品を売り込もうと奮闘されている方々です。
私たちは、箱作りの知識やノウハウはもちろん、手作業による箱作りにこだわっています。手作業というのは、手間はかかりますが、かゆいところに手が届きます。そのひと手間が、こだわりの商品を開発するお客様の細かいご要望にお応えできているのだと思います。これは他社に負けない自社の強みです。

今一度原点に立ち返り、箱作りに注力しようと。その考え方を従業員のみんなにもあらためて伝えていくことから始めました。

インタビューを受ける久保良太社長インタビューを受ける久保社長
独自性の高い小林紙工の貼り箱独自性の高い小林紙工の貼り箱

販路拡大を狙う基本の柱は雇用の創出

機械などを活用した自動化へ舵をきることは考えませんでしたか?

もちろん自動化も良いと思います。ただ、自分たちがやることではないなと
貼り箱というのは、まさに紙を貼って箱を作る作業になりますが、全国的にみると同じような業種の会社は減ってきています。ほぼ手作りですので。今この時代に手作り?って感じなんです。だから、弊社と同じような手作りの会社がもうほとんどなくなってきています。

でも、いいものを作って提供できれば、まだまだ貼り箱の需要はあるんです。
例えば、細かい部分の品質を求められても、それは手作業なので無理ですと答えざるを得ないシーンがよくあります。手作りだからこれが限界ですよと。ただ、時間をかけて商品を開発してきた企業様にとってはそうはいかないわけです。すごく些細なところもこだわりがあります。普段気にしないようなところまで。そこがキモなんです。どうしたらお客様のご要望に近づけるか、創業以来培ってきた経験値を以てしっかり対応していく。しっかり提案していくこと、それが弊社を選んでいただく理由になっていることがわかってきました。

薄利多売で勝負はしない、手作りのこだわりですね。

そうです。これから自社の強みを生かした道に進むべきだと考えたときに、一般的に販売されている、いわゆるどこでも売ってる商品の卸売りでは勝負にならない。全国には私たちの箱を求めている人はたくさんいるはずだと。他社には無い手作りならではの価値を追求し、全国に向けたオリジナル貼り箱のネット販売、インターネット上で手軽に発注できる環境を整え、そのネットショップと結びついた情報発信をしっかりい行っていこうと考えました。

ただ、本来わたしたちがやりたいことは、決してネットショップを開設することではありません。ネットショップ開設はあくまでも手段のひとつでしかないので。利益率の向上はもちろんですが、ネットショップ事業で売り上げを伸ばすことで、弊社のサステナビリティな取り組み(障害者就労施設等の連携)を強化し、価格競争からの脱却を目指していきたいと考えています。

現在弊社では、青森県内20の就業支援施設と連携し、100人ほどの障害者の雇用創出に成功しています。全国からの受注を増やすと同時に、製造拠点を増やし、全国の障害者就労支援施設と連携することで、生産性向上はもちろん社会貢献にも繋がるのではないかと。

それが本来の目的です。

一般向け店舗パッケージプラザコバヤシ弘前店様々な資材が陳列されている一般向け店舗
工場スタッフとコミュニケーションも工場スタッフとコミュニケーションも

だれもが社会で活躍するための支援を箱作りで

ネットショップ開設にあたり課題はありましたか?

手作りにこだわって、1人1人のお客様のご要望を解決できるようにとデジタル化に取り組んでいますが、正直まだその仕組みには課題が山積みです。対面セールスであれば細かいご要望など聞けることもあるのですが、「見て、触って、そして伝える。」対面で当たり前に行ってきたことの表現手段、スムーズな情報伝達、そのコミュニケーション方法について、今現状オンラインでは限界があると感じています。もちろん最終的には対面セールスと変わらない成果を残せる状況まで持っていきたいですが、まずは簡単な組み合わせのものから始めていきたいと思っています。

この業界では全自動化が進んできて、材料さえ準備すればあとは勝手に作ってくれるような機械も出てきています。簡単な箱であれば機械が作るのが当たり前になってきています。ただ、その道に進んでしまうと、結局はこの全自動の機械との価格競争になってしまうだけなんです。

私たちが受注したものは自社工場だけで作るのではなく、障害者施設の方々に作っていただいています。今回の取り組みが成功すれば、もちろん受注した弊社にメリットはありますし、障害者施設の方々へ働く場の提供をするという目標も大きく前進します。

品質の高い貼り箱を提供することとは異なる付加価値の提供ですね。

実はもうひとつ、この事業には達成したい目標があります。

ここ弘前市では、働こうと思ってもなかなか働きに出られないという、引きこもりの方々などが増加してきている状況です。現在弊社では、3ヶ月に1回スポットでそのような方に向けて仕事をご提供する取り組みを行っています。
期間は3日間、時間は9時から17時、いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。作業すればその分の加工賃を支払う仕組みです。外に出てきてもらうきっかけ作りの場ですね。もう5回ぐらい開催したのですが、回を重ねるごとに参加者が増えてきています。中には高い集中力でバリバリ働いてくれる方も多いんです。作業について事前にしっかり準備さえしていれば、何の問題もなく高い労働力として活躍できるんです。

働こうと思ってもなかなか働きに出られない方向けに、このような居場所をこの弘前に常設したいと思っています。どこか1つのフロアを貸切って。いつ来てもいいし、いつ帰ってもいいよと。極端に言うと、休む連絡もいらないし、いたければずっといればいい。好きなだけ稼げばいいし、帰りたくなったら午前中だけで帰っても良いんです。

引きこもりだけではなく、例えば、小さいお子様をお持ちの方でなかなか働きに出られない方もいらっしゃると思います。そのような働きづらさを感じている方々にも居場所づくりを提供したいという思いがあります。
そのためのものづくりです、そのためにこの貼り箱の仕事を確保したいんです。

工場の様子板紙と貼紙の貼り合わせ作業の様子
工場の様子型枠に合わせての裁断作業の様子

何事にも挑戦する組織 挑戦が当たり前の環境作り

今後取り組むうえで課題となっていることはありますか?

今回の取り組みについてはまだ始まったばかりですが、社内調整で困っていることは特にありません。
従業員には常々「全国から受注できる仕組みを作っていくから、いつその環境が整って実行されても現場も対応できるように準備していこう」という話はしてきていたので。手作りの貼り箱づくりにこだわるということ、だれもが社会で活躍するための支援を箱作りで行うという理念は、私たち従業員全員の共通認識として持っています。

ただ、DXの実務部分、技術的や知識はそうもいきません。開発するプログラムは専門家との連携が必要だと感じでいますが、何よりも課題としてあるのは、運用していくうえでより大事になってくる社内のデジタル人材が不足しているということです。長期的にDXに取り組むことを考えた場合、デジタル人材は自社で育成していく必要があると考えています。

現在は青森県で行っている、県内中小企業を対象にした経営課題の解決をサポートするプロフェッショナル人材の採用支援を活用して、デジタル人材の育成に取り組んでいるところです。デジタル人材育成については、一過性の学びではなく、研修と実践を計画的に繰り返し、実務レベルで企業のDX推進を主導できる人材を育成してきたいと考えています。

DX推進を検討する企業様にメッセージをお願いします。

目的をしっかり持つ。これに尽きると思います。技術への課題ももちろんありますが、それが1番大事だと思います。

私も今までいろいろなことに挑戦しながらも、途中挫折したこともたくさんあります。継続して取り組めていることと、中途半端に終わってしまったことの違いを考えると、必ずこれは達成したいという強い思いが大きく影響しているのは間違いないです。今思えば挫折した事業は、思いつきであったり、必ず成し遂げるという思いが足りていなかったのだと感じています。

今回の事業は会社の1つの柱となることです。関わる方々も多いです。社会貢献という意味でも大きな意味のある取り組みです。雇用創出のための受注拡大、そのために得意分野を活かした全国展開、その手段としてのネットショップを立ち上げるということです。正直ネットショップでなくても、他に目的が達成される可能性がある手段があれば、迷いなくそれを実行していきます。

会社としての理念をもちつつ、そこに従業員の協力や理解があって初めて物事をすすめられると思います。その思いがあれば、自身も必要な行動をとるでしょうし、いろいろな方にも相談するでしょう。いろいろな人との出会いもあると思います。すべては明確な目的があってこそのDXだと感じています。

工場も併設する株式会社小林紙工本社工場も併設する株式会社小林紙工本社
工場も併設する株式会社小林紙工本社目印の本社看板

DXで得られた効果

課題

  • 卸売り分野の停滞による新たな売り上げ確保
  • 青森県内顧客開拓の頭打ちの打開
  • 誰もが社会で活躍するための支援の強化

効果

  • 新事業の立ち上げをきっかけに、自社の強味の共通認識の確認ができた
  • 全国展開に向けた考え方(役割やその意味)の整理ができた
  • 全国販売に向けた、高付加価値「貼り箱」オンライン受注のための土台ができた

株式会社小林紙工

所在地 〒036-8326 青森県弘前市藤野2丁目10-4MAP
TEL 0172-36-5311
URL https://kobayashi-shikou.shopinfo.jp/