八戸の鉄工所が、RPAで事務作業を自動化! 『月40時間の人件費削減』年商10倍へスモールスタートでDX始動!

有限会社鈴木鉄工所
1949年創業、精密機械加工で食品機械から半導体製造装置、自動車部品まで幅広く製造してきた鈴木鉄工所。
分業化が進む町工場が多い中、多能工育成に力を入れて技術伝承を行っています。また近年では女性社員も積極的に採用し、多様な人材が活躍できる町工場を目指しています。
今回は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した業務改善の取り組みについて、鈴木鉄工所の鈴木 一正(すずき かずまさ)さんにお話しをお伺いしました。
事業内容
精密機械加工による金属部品の製造
協力企業
株式会社デーリー東北新聞社
元美容師/元漁師/元銀行マン/高卒女子アベンジャーズなスタッフ活躍中元美容師/元漁師/元銀行マン/高卒女子アベンジャーズなスタッフ活躍中
鈴木鉄工所で製作している部品鈴木鉄工所で製作している部品

鈴木鉄工所のDX挑戦と10倍成長戦略

DXに挑戦するきっかけを教えてください

私は3年前にUターンし、父と母が経営している鈴木鉄工所に三代目の跡継ぎとして入社しました。
鈴木鉄工所は総勢13名の小さな町工場です。地方の製造業においては昭和の仕事の進め方が色濃く、技術の伝承も課題で、跡を継ぎたくなるような収益状態ではないのが現状です。
当社は「ビックカンパニーよりグットカンパニー」を掲げているものの、ある程度の規模がなくては時代の流れについていけない為、“年商1億程度の現状を10億程度まで成長させる計画”です。
現状の規模ではDXに取り組まなくても存続することは可能ですが、年商を1億から10億にするという目標を掲げた際、ボトルネックになるのは「仕事の流れの見える化、仕組み化」でした。
限られた人材や時間を有効活用するため、DXに挑戦し、事務作業やサポート業務の効率化・自動化を図っていくことにしました。

関東からUターンし、社長であるお父様から会社を継いでいく鈴木一正さん関東からUターンし、社長であるお父様から会社を継いでいく鈴木一正さん
手作業での仕上げなどもあり、事務作業をする時間の確保が難しい現状手作業での仕上げなどもあり、事務作業をする時間の確保が難しい現状

課題になっていた業務の流れについて詳しく教えてください

毎日の作業になっている取引先との見積算出、web発注システム(EDI)に関するルーティン的な事務な作業が負担となっていました。
取引先からの見積依頼を頂く部品数が多く、慣れていない社員が担当すると、2時間以上かかる作業です。
具体的な業務の流れは、
(1)まず取引先のweb発注システムにログインして、部品製造の見積依頼データをダウンロードします。
(2)そのダウンロードした見積依頼データをExcelで加工。必要な情報を抽出し、納品日ごとに同一部品で製造依頼数をまとめます。
(3)そして再度web発注システムで、部品単位で過去の受注データを検索・ダウンロードします。
(4)最後にダウンロードした過去データから受注価格を調べ、見積金額を算出していく。
というものです。

取引先との案件データの整理に毎日数時間かかっていた取引先との案件データの整理に毎日数時間かかっていた
職人さんが多く、事務的作業は社長の奥様が担当職人さんが多く、事務的作業は社長の奥様が担当

具体的なDX実現方法、効果について教えてください。

RPA(Robotic Process Automation)というツールで、手作業で行っていた業務を自動化することができるとDX・IT関係者さんに教えていただきました。
改めて調べてみると高額なRPAツールもあって、費用対効果を得られるか不安を感じていました。
費用を抑えて利用できるRPAツールを探していたところ、地元のデーリー東北新聞社さんのシステム開発部がシステム導入支援を行っていることを知り、導入を決断しました。
具体的にはRPAツールを利用して、web発注システムにログインして行う操作、Excelでのデータ加工を自動化しました。また見積データも過去の最高・最低金額を自動取得する仕組みになっているので、見積金額の算出が簡単になりました。
RPAツールの起動指示さえすれば、自動で業務が行われる為、空いた時間で他の業務を行うことができるようなりました。現場の担当者からは「放っておいても作業が進んでいるのでかなり楽になった」「作業工数が減った」との声もあがっています。
効果としては月40時間の人件費削減になりました。
(毎日2時間の作業×月の稼働日数20日間=40時間)

業務自動化のRPAプログラムツール「マクロマン」業務自動化のRPAプログラムツール「マクロマン」
業務自動化システムを構築したデーリー東北新聞社システム開発部の十文字さん業務自動化システムを構築したデーリー東北新聞社システム開発部の十文字さん

町工場のイメージを革新する新しい3Kプロジェクト

今後の展望を教えてください。

「きつい」「汚い」「危険」の3Kと言われることがある町工場のイメージを「かっこいい」「高所得」「加工屋」の新しい3Kに変革していくことを鈴木鉄工所は目指しています。
(1)「かっこいい」町工場を実現する為に、ガレージのようなデザインのスタイリッシュな工場環境を構想中。働く人たちが楽しさを感じ、誇りを持てる職場を作っていきたいと考えています。
(2)「高所得」を実現する為に、仕事の仕組み化、技術の向上、製品の付加価値化に注力しています。
(3)「加工屋」としての地位を確立するために、顧客のニーズに柔軟に応える高度な加工技術、納期対応などで、顧客満足度を高め、町工場としての価値を高めていきます。
将来的には、自宅にいながら工作機械の加工プログラム作成や工作機械の遠隔操作ができる環境を整備し、リモートワークの体制を整えていきます。
魅力ある会社への成長に向けて、ものづくりの楽しさを追求する仲間が集まってきています。技術や経験に関係なく、ものづくりに情熱を持つ人々を広く歓迎しています。
最近では、最近では、元美容師、元漁師、元銀行マンなど他業種から転職してきた人材が活躍しています。
また昨年、高卒19才の女性が入社してくれたんです。しかも現場の職人として。成長も早く、期待感、未来感で、会社がキラキラしてきました。
新たな視点や経験を持つ多様な人材が集まることで、今までにないアイデアが生まれ、町工場の可能性が広がっていくと信じています。集まってくれた仲間と楽しく、長く働いていく為に、DXを上手く活用していきたいと思っています。

初めての高卒女性を職員として採用、鈴木鉄工所の現場を支える人材に急成長中初めての高卒女性を職員として採用、鈴木鉄工所の現場を支える人材に急成長中
若い世代も活躍中若い世代も活躍中

DX推進を検討する企業様にメッセージをお願いします。

今回RPAを活用したDXに取り組んでみて、ヒト・モノ・カネといった経営資源が乏しい中小企業だからこそ、DXでヒトの可処分時間を創出していかなければいけないと強く思いました。
DXは費用がかかり大企業が行うものと考えがちですが、県DX総合窓口のような相談できる場所低コストで利用できる様々なツール もあります。
中小企業だからこそ、短時間で大きな成果を出せるDXを推進できると思います。小さくてもいいから、まず一歩踏み出して、今までの業務を変えてみる。そうすれば世界が変わります、始めやすいところから積極的にDXに取り組んでいきましょう。

有限会社鈴木鉄工所

所在地 〒0031-0801 青森県八戸市江陽5丁目26-13MAP
TEL 0178-22-1059
URL https://www.suzuki-tekko.com/